一般社団法人日本マイクロクレデンシャル機構設立準備委員会は、2025年7月8日に御茶ノ水ソラシティカンファレンスセンターにて設立準備委員会を開催しました。

私共は2023年8月に大学の国際化促進フォーラム、Japan Virtual Campus運営委員会(以下、JV-Campus)、一般社団法人日本オープンオンライン教育推進協議会(以下、JMOOC)の3団体合同で「マイクロクレデンシャル共同WG」を発足し、国内にマイクロクレデンシャルを普及することと共にアジア太平洋地区におけるマイクロクレデンシャルの国際連携を目指して取り組みを進めておりますが、この活動を更に公益性を高めていくことを目的とした「一般社団法人日本マイクロクレデンシャル機構」を9月末に設立する準備を進めています。

グローバルにオンライン学習環境が発展して、学習者が内容を自由に選択して時間、空間の制約を受けずに学習することが実現しつつある中、様々な学習者の要求に適切に応じられるためには、学習用コンテンツの学習目的、内容の表示や修了条件の明示とともに質保証が必要になります。

マイクロクレデンシャルは、学習者が知っていること、理解していること、またはできることを証明する対象が重点化された学修成果の記録です。その学修成果は明確に定義された基準に基づいて評価され、教育の質が保証されます。

一般社団法人日本マイクロクレデンシャル機構設立準備委員会はこの活動を通じて、マイクロクレデンシャルの制作と提供を推進するとともに、運用プラットフォームの整備と連携、スキル体系の国際連携等を進めて参ります。

マイクロクレデンシャルとは

マイクロクレデンシャルとは、修士や学士などの学位プログラムを補完する教育として,特定の領域を比較的短期間で学び,学習者が知っていること,理解していること,またはできることを証明するものです。マイクロクレデンシャルは、産業構造の急速な変化への対応や持続的な社会の実現のためのリスキリングやリカレント教育や、全ての人に学習の機会を提供することを目的にしています。そのため、授業方法もオンラインやブレンド型教育などの柔軟な方法が使われます。マイクロクレデンシャルは、それ自体が価値を持つと同時に、複数のマイクロクレデンシャルを取得することで学位取得につなげることもできます。

(参考文献)

UNESCO, Towards a common definition of micro-credentials, 2022

設立趣意書


「一般社団法人日本マイクロクレデンシャル機構」設立趣意書(全文)

  1. 設立の背景と趣旨
    現代社会は、地球環境問題やグローバルな経済運営、複雑な地政学的課題といった諸問題に直面しており、国や地域さらに個人のいずれもが、これらへの適切な対処を迫られている。人類社会を持続可能なものとするために、いま我々は何を考えるべきであろうか。個人を取り巻く環境においても、AI技術に象徴される急激な技術革新、それに伴う労働市場の大きな変化が、現実の問題として立ち現れているこの激しい変化に対応するためには、日本経済や所属する組織の競争力を高め、個人の対応力を不断に高めなければならない。しかし、この要請を本質的に困難たらしめるのは、変化の速度と多様性への適応という課題である。
    この課題に対処すべく、従来の高等教育制度においても数多の改革が推進されているが、既存の学位制度に加え、より柔軟かつ多様な学習システムの構築が急務となっている。
    これは個々人が必要に応じて学習し、変化する労働市場や技術革新への対応を可能にするものである。ここでは、個人の多様な学習成果が的確に記録・表現され、各人がその能力を有効に発揮しうる環境を与えられることに役立つ。
    このような柔軟かつ多様な学習とその成果証明の手法として、「マイクロクレデンシャル(Micro-credentials)」への関心が世界的に高まりつつある。UNESCOやOECD、EU諸国をはじめとした国際機関や政府がその重要性を認識し、標準化と認証の枠組みを推進している。オーストラリア、ニュージーランド、マレーシア、タイなどのアジア太平洋地域において具体的な取り組みが進められている。
    一方、日本においては、マイクロクレデンシャルの取り組みは緒に就いたばかりであり、学習成果の信頼性確保、国際的互換性の担保、社会的な認知度の向上といった諸課題の統合的な解決が求められている。
    こうした状況を鑑み、国内におけるマイクロクレデンシャルの質保証・標準仕様の策定と外部認証制度の構築を推進するため、民間・教育界・学術界・産業界の関係者が連携し、公益に資する一般社団法人日本マイクロクレデンシャル機構(以下、「本法人」という)を設立するに至った。
  2. 目的、及び事業内容
    本法人は、マイクロクレデンシャルに関する国内外の動向を踏まえ、日本におけるその信頼性・透明性・有用性を高めることを目的とし、次の事業を行う。
    1)マイクロクレデンシャルの仕様・標準の策定および普及
    ・UNESCOなど国際機関のガイドラインを踏まえた国内仕様の開発
    ・デジタル証明(Open Badge等)との連携設計
    2)第三者によるマイクロクレデンシャルの外部認証制度の構築・運営
    ・教育機関・企業等が発行するプログラムへの審査・認証
    ・公正かつ透明な認証プロセスの整備
    ・認証マーク・登録制度の管理
    3)マイクロクレデンシャルの可視化・流通促進
    ・資格枠組み(NQF)、スキル標準、職能フレームワークへのマイクロクレデンシャルの体系的なマッピング
    ・取得者の学習成果の記録・ポートフォリオ支援
    ・企業や社会への認知・活用支援
    4)政策提言および国際連携の推進
    ・日本国内の制度整備に向けた調査・政府への提言
    ・アジア太平洋地域を中心とした標準共有・相互承認の促進
  3. 運営体制
    本法人は、中立的かつ公益性を重視し、教育界・産業界・行政関係者・専門研究者等からなる諮問委員会および認証審査委員会を設置し、透明性・信頼性の高いガバナンス体制を構築する。
    また、マイクロクレデンシャルの社会的有用性を早期に高めるために、高等教育機関、専門職業教育や様々な実務教育に関わる団体等とも、可能な限り連携して事業を推進する。
  4. 今後の方向性
    今後、本法人は日本国内におけるマイクロクレデンシャルの標準的な基盤を提供し、個人の学びの成果を社会に適切に接続しうるエコシステムの中核としての役割を担う。また、アジア太平洋地域における相互承認や国際的な互換性の確保に貢献し、日本の人材育成力・教育力のグローバルな信頼性向上にも寄与する。

以上の趣旨に基づき、本法人の設立をここに宣言する。


2025年7月8日
一般社団法人日本マイクロクレデンシャル機構
設立発起人一同